アカシア桃日記

ダンサー・施術者/丹羽洋子のブログです

「カメラの前で演じること」を読んで

先日見た映画「ドライブ・マイ・カー」の監督、濱口竜介さんが気になって著書「カメラの前で演じること」を読んだ。

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濱口監督はロカルノ国際映画祭という、たぶんすごい権威ある映画祭で演技未経験だった主演の女性4人が最優秀主演女優賞をとったことでニュースになっていた映画「ハッピーアワー」を撮られた方でした。

この本は、神戸で行われた5ヶ月間にわたる市民参加の即興演技ワークショップからはじまりその後の映画撮影まで、どのようにして辿り着いたかの方法が書かれている。

 

カメラという他者の視線、社会の目の前で自分が自分のまま、別の何かになること。演技未経験だった演者たちがカメラの前に立つことを根気強く支え励ます細やかな配慮の積み重ねに驚き、またそのような幸せな場があったことにふつふつと羨望の気持ちが湧いてきました。共有された下地があってこそ立ち現れてくる何か。そういうものがあるというのは経験的にわかる気がする。だから余計そう思ってしまった。

 

「聞く」ということを大きな柱としてはじまった「即興演技」のワークショップ、そこで行われていたことはお互いの関心を持ち寄りその人らしさを尊重しあう、それはある種のセラピーのように作用して自分自身を肯定し自分として在ること、そしてカメラの前で演じることへのブレなさになっていったように感じられた。

 

そういった体験はきっとワークショップ、撮影が終わった後にも自分らしく生きることへの支えになっていると思う。私がこれまでダンスを通して体験してきたことと通じるものを感じました。カメラの前に立つことと舞台に立つことは似ているところがあると思う。

 

ダンスでもきっとそういったことができると思うし、そういった試みはすでにあちこちでいろんな人がやられているとも思う。私も、なにかしらの生きづらさを抱えている人が自分らしく生きることの下支えとなるような体験を、ダンスを通して関われたらと思っている。